「いつでも書き直せる」は疑問。思いを込めて語りかけよう

af9920057232_R遺言の書き直しはできるけど


「遺言は、いつでも取り消したり、何度でも変更することができます。遺言を変更し、または取り消すためには、新たな遺言書を作成すればいいのです・・・・・。」

 数ある遺言の手引書には、上記のように、遺言はいつでも、何度でも書き直せるという趣旨の記載がされています。この記述は、法律上は間違った記述ではありません。

 しかし、現実に、遺言を取り消したり変更するために再度遺言書を作成するという方はどれだけいらっしゃるでしょうか。私は、極めて少ないのではないかと 思います。

 遺言は、後世に残すメッセージであり、口にしたことのないような内心をつづったものであり、亡くなった後に見てもらうもの、軽々しく書くものではないもの、というのが我が国の国民感情に合致するのではないかと思います。
 ですから、法律上は「いつでも取り消したり、何度でも変更することができる」として も、実際には、何度も書くものではないという認識が強いのではないかと思います。

 したがって、そうした国民の認識を差し置いて、「法律上は何度でも書き直せます」いう解説をしたところで、実際にはあまり意味のあることではないと思われます。

複数の遺言はトラブルの元


 さらに言えば、複数の遺言が遺されている場合には相続人間の紛争になる可能性が高まることになります

 例えば、最初に作成した遺言は、全ての財産を長男に相続させるという内容であったとします。ところが、後日、最初の遺言を取り消したうえで、全ての財産を二男に相続させるという新たな遺言を作成したとします。こうなりますと、長男としては、「後で作られた遺言は無効である」と主張したい気持ちになります。
 そうすると、二男としては「わかりました」ということにはならず、「後で作られた遺言は有効である」と主張することになります。
 
 特に、後で作られた遺言が自筆証書遺言であった場合は、非常に醜い紛争となる可能性があります。
 
なぜなら、後の遺言により不利な立場になってしまう者の争い方としては、後で作られた遺言が自筆証書遺言の場合には、後の遺言で相続分を譲り受ける者が 遺言者に様々な影響を与えて遺言を書かせたのでないか、ということになるからです。
 
 そうすると、遺言が、いつ、どこで作成されたのか、誰が遺言作成の指導をしたのか、遺言作成の前後に遺言者に頻繁に接触していたのは誰か、など、泥試合が始まってしまうのです。

想いを語りかけてください


 私は、むしろ、遺言というものは何度も書くものではないからこそ、いろいろなケースを想定しながらよく考えて、遺される家族に対してあなたの思いを語り かけるつもりで作っていただきたい考えるのです。

 なお、遺言者が、遺言に記載された内容に反する行為を生前にした場合には、遺言の内容と抵触する部分について遺言を撤回したものとみなされますこれは、遺言者には、もはや、遺言どおりの内容を実現したいとの意思はないと考えられるからです。

 たとえば、全ての財産を長男に相続させるという内容の遺言を作成した後に、一部の土地を遺言者が第三者に売却してしまった場合には、売却した土地につい ては遺言者が遺言の内容の実現をする意思はないものと考え、その土地については遺言を撤回したものとみなすのです。ですから、このような場合に、わざわざ前の遺言を変更するための新しい遺言を作る必要はないわけです。

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